飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
契約結婚……に隠された秘密を探って
『来週の火曜日、そっちの方へ行く予定があるんです。少し会って話せませんか?』
電話の向こうから聞こえてくるのは慣れ親しんだ従兄の声、彼の様子はいつもと変りないのに妙に心臓がドキドキ言っている気がする。時々櫂さんと一緒の時に感じる甘いものとは違う、不安からくるそれを拳をぎゅっと握る事で誤魔化した。
「ええ、私も柚瑠木兄さんに見てもらいたいものがあるの。火曜なら櫂さんも仕事で隣県に行くらしいから大丈夫よ」
『そうですか、では午前中には千夏の家に行けると思います。準備をしていてください』
柚瑠木兄さんは用件だけを話すと、すぐに通話を切ってしまった。もしかしたら忙しい仕事の合間に電話をかけてきたのかもしれない。
それくらいこの事が柚瑠木兄さんにとって大きな問題なんだということは分かる。私は部屋へと戻り、隠しておいた大量のコピー用紙を取り出した。
隠れてこうして櫂さんの行動をチェックしている、妻だからといってそんな事をするのは間違っているのかもしれない。でも……これは私と櫂さんだけではなく父も関わっている問題だから。
そうやって自分を納得させながら、もうそのコピー用紙の一枚一枚に丁寧に目を通していった。
「ここも、父の関わっている会社だわ。それにここも……」
父との関係は良くなかったが、あの人の仕事については何度も聞かせれてきた。まさかそれがこんな時に役に立つなんて……