飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~


 ……やめて、私になんて構わないで。
 貴方は何もわかってない。私が本当はどんな人間かも、どれだけ親兄弟に疎んじられているかという事も。これ以上私に関われば、それを知られてしまう。
 何故か分からないけれど、私の生い立ちや今の私の立場を彼にだけは知られたくないと思った。

「何度言われても無理よ。私の居場所はここなの……ここしかないのよ」

 今までだって屋敷の奥のこの部屋に閉じ込め隠されてきた、きっとこれから先も父は私を同じように扱うに違いない。自分の過ちを隠すように、私を誰にも見せないように……

千夏(ちなつ)! お前はそれでいいのか、ずっと理不尽な理由で閉じ込められているのに。もっと自由になりたいと、好きな生き方をしてみたいとは思わないのか! 千夏が望むのなら俺が……」

「もうやめて! たった数回あっただけの貴方に私の何が分かるというの? 自由を奪われ希望は潰されてきたの、いまさら何を望んでも同じよ!」

 私の事を思って言ってくれていると分かってるのに、戸惑いから感情的になってしまった。普段の自分らしくない言動に、恥ずかしくなり頬が熱くなった。
 このままではもっと彼に八つ当たりしてしまう、私は逃げるように部屋へと戻ろうとした。

「覚えておけ千夏! 俺はどんな手を使っても、お前をそこから出してやる!」

 彼の言葉が聞こえないふりをして、そのまま部屋に入ると急いで窓を閉めた。力が抜けその場に座りこんでしまうと、悲しくもないのに涙が溢れて止まらなくなった。


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