飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~

「あら、そう? じゃあ、教えてあげるわ。本当は彼ね、私を結婚相手に選びたかったそうよ? この前私の部屋に()()()が来てそう本音を話してくれたの、ふふふ」

「嘘です、(かい)さんがそんな事を言うわけがないわ!」

 異母姉の百々菜(ももな)が馴れ馴れしく櫂さんを名前で呼んだことに鳥肌が立ちそうなほどの嫌悪感を感じた。自分が選ばれるはずだった、そう言う事で私より優位に立ちたいという異母姉の本心が見え隠れする。
 それでもその言葉に傷つかないほど私は強くもなくて、胸をナイフで抉られるような痛みに襲われる。

「嘘? なぜそう言い切れるのかしら、櫂さんとアンタの結婚はただの契約でしかないんでしょう。私も最初からおかしいと思ってたの、千夏(ちなつ)みたいな卑しい子が彼に選ばれたことを」

「……どうして、お姉様がそれを?」

 契約結婚の事を知っているのは櫂さんと私、そして梓乃(しの)だけのはず。もちろん私がそんな事を百々菜に言うわけがないし、異母妹の梓乃だって話すとは思えない。
 ならば、本当に櫂さんが……?

「わざわざ言わなくても分かるでしょう? 彼は時が来たらアンタとの離婚も考えていると教えてくれたわ、きっと今度こそ私を選んでくれるんでしょうね」

 百々菜は勝ち誇ったようにそう話すが、それならばなぜ櫂さんは最初から異母姉に結婚の申し込みをしなかったのか? この結婚の相手が私でなければならなかった理由も契約結婚の訳もまだ謎のまま。


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