飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~

「ええ、もう話は終わったわ。五分以内に迎えに来てちょうだい、それ以上は待たないわ」

 どうやら自分の言いたいことはすべて話し終えて気が済んだらしい、百々菜(ももな)は通話を終えると紅茶を飲み干してさっさと席を立った。
 自分本位な行動に呆れながら彼女に合わせて自分も席を立つ、私だってもうここに用はない。

新河(しんかわ)さんに捨てられるまで今の生活を楽しんでいると良いわ、もし帰る場所がなくても二階堂(にかいどう)の家に戻れるとは思わないことね」

 捨て台詞のようにそう言うと、百々菜は伝票を私に乱暴に押し付けてそのまま店から出て行った。外にはすでに運転手がドアを開けて待っており、彼女はその車に乗り込んですぐに見えなくなる。
 ……私が二階堂の屋敷を出ても、あの人たちは何も変わっていない。梓乃(しの)だけは私と同じ立場に立って話を聞いてくれるようにはなったけれど。

 異母姉の話をどこまで信じていいのかは分からない、すべてを鵜呑みにするほど私は百々菜を信用はしていないから。
 だからと言って何かしらの根拠がなければ、こんな話はしなかったでしょう。

「……とりあえず、家に帰らなきゃ」

 いつまでもここに居ても仕方ない、私は会計を済ませると大通りでタクシーを拾いそのまま自宅へと帰った。(かい)さんの手帳に書いてあった内容と百々菜の話を頭の中で何度も整理しながら。


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