飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
契約結婚……の真実を知って心乱れて
「まーた、うわの空だな。いい加減、何があったのか教えてくれないのか?」
「……え? いえ、そんな事は」
櫂さんと夕食の最中に異母姉の百々菜との会話を思い出し、ついボーっとしてしまっていたらしい。櫂さんの言い方だと私は何度も考え事をしていたらしく、彼もそんな私の様子が気にはなっていたみたいで。
だけど百々菜と何があったのかを詳しく話せば、私がコソコソと櫂さんの事を調べている事もバレてしまう。柚瑠木兄さんに協力していることもあり、勝手に櫂さんに相談することは出来なかった。
「隠し事、されるのはちょっと寂しいんだけど……」
それなら櫂さんはどうなんです? 私の知らないところで父と会って何をしてるのか、私には教えてくれませんよね? ……なんて言えるわけもなく。
シュンとした表情の櫂さんに、私の方がズクズクとした罪悪感を感じてしまう。
お互いに相手の隠し事に気付いて、疑心暗鬼になりギクシャクしてしまってる。こんなのは私や櫂さんが望んだ関係じゃないのに、今はどうする事も出来ない。
「ごめんなさい……」
謝ってしまえば私が櫂さんに隠し事をしていることを認めることになる。それでも彼は無理に私から聞き出すことはしないだろうとどこかで分かっていたから。
困ったように髪をかき上げると櫂さんは黙って食事を再開し、それ以上は何も問い詰めてはこなかった。