飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
駅で待ち合わせしようと言ったのに、梓乃はわざわざ家まで私を迎えに来てくれた。何でも連れて行きたい店があるから、という事らしい。
そう言われれば悪い気はしなくて、彼女を乗せてきた運転手に挨拶して後部座席へと乗り込んだ。
「ふふ、梓乃のオススメのお店なんて楽しみだわ。少し前の私達からは考えられないもの」
「……別にオススメってわけでは無いわ。ただ、何となくまた行きたいなって気分になっただけよ」
それを気に入っているとは言わないのが梓乃らしくて、余計に楽しくなる。それにしても彼女の頬が少し赤い様な気がするのは何故かしら?
気になってジッと見ていたら睨まれたので、慌てて窓から景色を眺めるふりをする。
連れて来られたのはイタリアンのレストラン、少し落ち着いた雰囲気の感じのいいお店だった。梓乃に気付いたウエイターが丁寧にお辞儀をして奥の席へと案内してくれる。
もしかして常連なのかと思っていたのだけど……
「高宮様から連絡を頂いています、ごゆっくりどうぞ」
高宮さん? 梓乃の婚約者でもある彼の名前が出てちょっとだけ驚いた。契約結婚をするのだと梓乃から聞いていたのだが、意外と親しくしているのかしら?
「……そう何か言いたげな目で見ないで。ちゃんと話をするから」
照れくさそうな梓乃の顔を見て、もしかしたらという考えが浮かぶ。もともと箱入りで育って恋など興味がないという感じの異母妹だったが、高宮さんという婚約者が出来て何か心境の変化があったのかもしれない。
席に着くといつ梓乃がその話をしてくれるのかと、ワクワクソワソワしてしまった。