飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
「よく分からないの……」
「え? 分からないって、いったい何が?」
ウエイターに注文を済ませた後、梓乃は少し小さな声でそう話してきた。梓乃は大人しそうに見えて意外と気が強く負けず嫌いなところがある。そんな彼女らしくない言い方に私の方が戸惑ってしまう。
分からない、というのはさっきの会話から考えると高宮さんの事についてなのでしょうけど。
「契約結婚でお願いしますって言ったのよ、私は。一輝さんもそれで構わないと返事をくれたわ、それなのに……」
「二人の契約に何か不都合があったの?」
元々、梓乃と一輝さんの契約結婚は彼女の方から提案したのだと聞いている。だが詳しい契約の内容までは私も知らない、だから梓乃が何を悩んでいるのか分からなかった。
もし二人が上手くいってないのなら、この話は無かったことにした方が良いのかもしれない。櫂さんに手伝ってもらう事も考えていたのだけど。
「一輝さんは、まるで私を恋人のように扱うの。優しい言葉で甘やかして細かい所まで気づかってくれる、私はただ契約上の妻になるだけの女なのに」
「……ええ? それって、どういう事なの」
私が噂で聞いた高宮 一輝という人物像からはちょっと想像出来ない。どちらかと言えば女性嫌いでどんな美人にも靡かない、そんな男性だと有名だったはずだから。