飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~


 ゆっくりと開かれる扉、礼儀正しく挨拶してきたその人には見覚えがあった。なぜこの人がこの場所に? そんなはずは無いと思うのに、何度見直してもその人に間違いなくて……
 
「ほら、千夏(ちなつ)。彼があのSHINKAWAグループの御曹司、新河(しんかわ) (かい)君だ」

「俺の名前も顔も知らなかったって顔しているな、やっぱり」

 その言い方、やっぱりこの人はあの夜の男性と同一人物だと言う事なのよね? だったらなおさら彼の行動の意味が分からない、彼が何度も私の部屋の外に訪れた理由も。

「どうして……? SHINKAWA グループの跡取りだなんて一度も」

 知らない、彼からは何も聞いてなかった。この人の名前も歳も私は何一つ知らないままで、それでも良いと思ってたのに。
 ただ……フッと深夜に現れては、少しの時間話をしていただけ。

「千夏はどうしてだと思う? 最後の俺の言葉、次に会うまでに真剣に考えろって言ったのに」

 それは確かに覚えてる、でも私にだって簡単にどうにか出来るような事ではなかったし。

「新河さんは……なにを企んでるんです? こんな事までして私を一体どうしたいんですか?」

 そうやって訊ねれば彼は満足そうに笑って、私の手を取って囁いた。とても信じられないような言葉を……

「あの夜の約束通り、千夏を自由にしてやりに来た。お前はこれから俺の言う事に頷いていればいい」

「……え?」

 訳が分からず戸惑っている私の手を取って、新河さんはハッキリと言った。

「決して悪いようにはしないと約束します。千夏さん、契約結婚……俺としてくれますよね?」


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