飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
「広いですね、迷子になりそう……」
「そうか? この程度で迷子になるなら、今まで住んでいたあの屋敷ではどうしてたんだ」
不思議そうに私を見る櫂さん。そうか、この人は私が今までどんな環境でどういう生活をしていたのかを知らないんだわ。でもその事を言ってこの人に同情されるのは嫌だと思い曖昧に笑って誤魔化した。
私がこんなことを望むのは厚かましいかもしれないけれど、夫となる人とは対等な関係ありたかった。
「ここがキッチンで、そっちのリビングも千夏の好きなように変えてくれていい。後は向こうがバスルームで……どうした?」
次々に部屋を説明していく櫂さん、だけど彼の言葉に私は戸惑いポカンとしてしまっていた。この素敵なキッチンと広いリビングを私の好きにしていい?
そんなの今まで一つに部屋に閉じ込められていた自分には考えられない事で……
「あの……私が、このお部屋に自由に出入りしてもいいってことですか?」
「……当たり前だろ? ここは千夏の家でもあるんだから、何も気にする必要はない」
櫂さんは私の頭を撫でて優しくそう言ってくれたけれど、その瞳からは少しだけ怒りのようなものを感じた。もしかしたら私が何か彼を怒らせるようなことを言ってしまったのかもしれない。
その事に落ち込みかけながらも、櫂さんの後を慌ててついて行った。