飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
初めてカフェで会った時? そう言われてもピンとこない、私は普段から部屋に引き籠りよっぽどな事が無ければ屋敷から出る事なんて無かったし。
でも新河さんの言った【名刺】という言葉には心当たりがあった。少し前に従兄である柚瑠木兄さんとその奥さんと一緒に出掛けた時に、ある男性から名刺を渡されて思い出にと取っておいたから。
「あの時の……?」
余計に訳が分からなくなる、この人が私の部屋の下に現れるようになったのはいつから?
「千夏は俺に連絡くれなかっただろ? まあ……たまたま傍に座ってた二階堂財閥の御曹司に気付いていたからこうして探し出せたけど」
新河さんの言葉は信じられないような事ばかり、まさか柚瑠木兄さんの存在に気付いて私までたどり着くなんて。今までこんな風に自分を探した人なんていなかった、あの屋敷でいないものとして扱われてきた私なんかを。
「どうして新河さんはそこまでして私を……?」
「櫂だ」
私の質問には答えず、新河さんは私に名前を教えてきた。そんなのもう何度も聞かされて知ってますけど……
「……え?」
「俺の事は櫂と呼んでくれ、これからはアンタも同じ新河になるんだから」
思わず「はい、分かりました」と答えてしまったけれど、本当にその後すぐにこの人との結婚生活が始まるなんてこの時は夢にも思っていなかった。