飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
強引な櫂さんに抵抗する事は出来ないし、私たちは契約とはいえ夫婦になったのだから口付けくらい当然なのかもしれない。
予想もしなかった展開に戸惑いながらも、私は自分なりの新婚夫婦を想像し櫂さんのキスを受け入れるよう瞳を閉じる。
「………」
さあどうぞ、言わんばかりの私の唇に櫂さんが近づいてくるのが分かる。
もちろん引き籠りだった私にはこれが人生で初めてのキス、それなりに夢や憧れもあったけれど櫂さんが相手ならばそれだけでドキドキが止まらなくなる。
サラサラとした彼の髪が触れて少しくすぐったい、櫂さんの唇が触れるのをじっと待っていると何故か大きなため息が聞こえてきて……
いきなりギュッと鼻を摘ままれて驚いて目を開けた。
「いひゃい、なにするんですか!」
すぐに鼻を摘まんだ指は外されたけれど、櫂さんはちょっとだけ困ったような顔をしている。滅多に見られない彼の表情に鼻の痛みも忘れてまじまじと櫂さんを見つめた。
けれどそんな私の額をペシンと手で軽く叩くと、彼は子供に言い聞かせるようにゆっくりと言ったのだった。
「あのさあ……こんな時は千夏がちゃんと抵抗してくれないと、俺の方が止まれなくなるだろう?」
「……へ?」
えっと私、さっきのは抵抗するべきだったの?