飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
私にそんな恋愛テクニックなんてあるわけないって櫂さんだって分かってるはずなのに、簡単そうに言われても困ってしまう。
彼が望んでいるなら受け入れても構わないと思っただけなのに、そんな言動をとった櫂さんは止めて欲しかっただなんて。
……訳が分からない。
従兄の柚瑠木兄さんや月菜さんもこんなやり取りをしていたりするのかしら? 穏やかなあの二人からはちょっと想像できないけれど。
「千夏はファーストキスなんだろ? こんな簡単に俺なんかに奪われてもいいのか」
櫂さんはおかしなことを言う。確かに私は初めてのキスになるけれど、それがどうして簡単に櫂さんと口付けたことになってしまうの? それに……
「私のキスの相手は夫である櫂さんしかいないのに、俺なんかにと言われても困るんですが……」
契約関係とはいえ私と櫂さんは夫婦になったのだから、そういった行為の相手は彼以外考えられない。櫂さんにとって妻の私はそういう相手ではないの?
不安になって彼を見上げれば、何故か櫂さんが顔半分を隠すように手で覆ってる。彼に耳が少し赤く見えるのは気のせいなのかしら……?
「……あの、櫂さん? 私何か変な事言いましたか」
「天才だな。千夏は……俺を幸せな気持ちにする天才だ」
いつもは目を逸らしたりしないのに、今の櫂さんは私の顔を見ようともしないでそう小さな声で呟いた。私が櫂さんを幸せな気持ちにする天才……?
意味が分からないまま、首を傾げてみせるとますます櫂さんは顔を隠そうとしてくる。いつも余裕なのかと思ってたから、その様子が意外で彼の事をじっと見つめてしまう。