飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
「ふうん、そういう可愛いこと言ってくれるんだ。じゃあさ、千夏も他の男に同じような事しないって俺に約束出来るってことだよな?」
私に問いかけているような言い方だけど、実際には答えは一つしか選ばせてもらえない気がする。笑顔なのに私を見つめる櫂さんの瞳は笑っていないから。
「もちろんです! 私に触れていいのは、その……夫である櫂さんだけなので」
ハッキリと答えるつもりが、途中から恥ずかしくなり段々小声になってしまう。耐えられなくなり俯くと頭頂部に櫂さんの視線を痛いほど感じた。
……笑ってもいいから、何か言ってくれないかしら? いつまでも反応のない彼に戸惑いつつ顔を上げようとすると。
「っと……俺はこの洗い物をしてくるから、千夏は先に出かける準備をしておいてくれないか?」
テーブルの上に置かれていた食器を手に取ると、櫂さんはくるりと私に背を向けてキッチンへと向かう。それは困るわ、作ってもらったのに片付けまで彼にさせるわけにはいかない。
「待って、櫂さん! 洗い物くらい私が……っ」
キッチンに入っていく櫂さんを追いかけようとしたけれど、すぐに櫂さんから強い口調で止められる。
「いいから! とりあえず今は部屋に戻っていてくれる?」
「はい……」
櫂さんの様子が気になりつつも、あまりしつこくしてはいけないと思い自分の部屋に戻る。さっきまであんなに笑ってくれていたのに、私が櫂さんを不機嫌にさせて決まったに違いない。
しょんぼりとしながら私は可愛らしいチェアーに座ると、何を失敗したのかと頭を抱えていた。