飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
契約結婚……を貴方に望まれるまでに
※本編から数か月前
「ねえ、見て! 新しいつまみ細工のイヤリング、月菜さんにぴったりだと思わない?」
さっき出来上がったばかりのイヤリングを、この家で唯一味方になってくれる使用人の女性へ見せる。いいえ、見て貰っていると言った方が正しい。他の人なんて私が話しかけてもまともに返事すらしてはくれないのだから。
「これはまたとても可愛らしいですね、柚瑠木様の奥様ならとてもお似合いになると思いますよ」
私の従兄である柚瑠木兄さんは二階堂財閥の御曹司で、月菜さんは彼の大事な奥さん。冷静沈着だった柚瑠木兄さんが月菜さんの事になるとビックリするほど過保護になる。
そんな二人が大好きで、ちょくちょく連絡はしてるのだけど……
「それじゃあ今度こそお二人に会いに行かれますよね? 奥様に渡すつもりで作ったアクセサリー、そろそろ箱から溢れそうですし」
「ああ、それは……その、ね?」
使用人の女性に言われて苦笑いをして誤魔化そうとする、なんだかんだで私は月菜さんと一度しかあっていないまま。何度も柚瑠木兄さんからは「三人で会いましょう」とメッセージを貰っているのに。
「そうやって外に出るチャンスをご自分で潰してどうするんです、前に出掛けた時泣くほど楽しかったと話してたじゃないですか」
いや、別に泣いてなんかなかったと思うわよ? とても楽しかったのは事実だけど。さすがに何か言い返さなくてはと思うものの、ズバッと事実を言われて返事に困っていたその時……
『コツッ、コンッ……コンッ、コンッ……』
ベランダへと続く窓に何かを当てられているような音、不思議に思って窓を開けベランダへと出てみた。
「こんばんわ、お嬢さん」