飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
「櫂さん、私……」
今まで周りの人に嫌われようと、ずっとどうってない顔をしてこれた。傷つく表情を見せればあの人たちは、もっと私の傍にいる人を奪うから。
だけど今は違う、きっとこの人の傍に居られるのかは自分自身の行動で変えていけるはず。それならば……
「ん、なんだ? 言いたいことがあるならちゃんと聞くから話してごらん?」
櫂さんのこの優しい声、こうやって私を急かさず待ってくれる。二階堂の屋敷のただの厄介者でしかなかった私を、本気で理解しようとしてくれるんだもの。
「どうして私と二人きりは嫌なんですか? もし櫂さんを不快にさせてしまう事があるのなら直します、だから教えてくれませんか?」
「……え? 俺が不快だって、千夏はいったい何の話を」
覚悟を決めて櫂さんに尋ねてみると、彼はポカンとした顔で私を見つめ返している。もしかして私は何か思い違いをしていたのかもしれない。
「えっと、あの……私は櫂さんがこうして一緒に居るのが苦痛だと感じているのだと思って。だってさっき、二人きりでいたくないと」
そうやって彼の言葉を思い出すだけで、やっぱり胸がシクンと痛む。少しの時間で櫂さんは、こんなに私の心を揺さぶるような存在になってる。
その事に驚きもあるけれど、今までみたいにその感情を黙って受け入れてそのまま諦めたくないと思った。だから……