飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
「俺がこんなに我慢してるのに、どうして千夏はそんな事ばかり言うんだよ! いくら箱入りだからって、ところ構わず煽られている俺の身にもなってくれ」
怒ってる……というよりも、櫂さんは困っているように見える。
何かおかしなことを言ったのかと思い返してみても、私は自分の気持ちを彼に伝えようとしただけで櫂さんを煽るようなことは言ってないはず。
「何がいけなかったんですか? その、私はもしかしたら鈍いのかもしれません」
そう言えば兄や姉はよく私のことを鈍感だと言って笑いものにしていた。でもあの屋敷で暮らしていくためにはある程度の陰口にも慣れてしまわなければならなかったから……
櫂さんにも兄姉のように思われているのかと考えると少し悲しくなり彼の顔を見れなくなる。けれど俯こうとする私の頬を櫂さんは両手で包むと、そのまま上を向かせる。
「だから、そうやって千夏が可愛いことばかり言うから! 二人きりでいると理性に自信がなくなったから外に出たのに、これじゃ意味がないだろ?」
しっかりと私と目を合わせたまま櫂さんは早口でそう教えてくれた。彼は私のことが嫌になったのではなく、私の言動にテレていただけだったみたい。
結婚したばかりなのだから、櫂さんも色々と慣れない事があるのかもしれないわ。だけど……
「良かったです、櫂さんに嫌われたんじゃなくて」
ホッとして、彼を見つめて微笑んだ。嫌われたくなくてこんなに必死になったのなんて生まれて初めてだったかも。