飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
もっと、何でしょうか? 櫂さんはそう言いかけた後は意味深に微笑んで、ゆっくりと私の首筋に頭を埋める。彼の吐息がかかるその近さに狼狽え、どうにか離れようとするけどもちろん逃がしてなどくれない。
それどころか……
「決まってるだろ、そんなの。千夏が俺相手にしか出来なくて、今まで誰にもしたことのないような事だよ」
「ちょっ、そんなところで喋られたらくすぐったいです!」
私は櫂さんの言動に振り回され、ここがそこそこ人通りのある場所だという事も忘れて大きな声を出してしまう。途端に周りの人の視線が私達へと向いてしまい、わたしは慌てて櫂さんを突き飛ばしていた。
今まで外にほとんど出ていなかったし、人付き合いも最低限だけ。そんな私はこうやって人に見られることには慣れていなくて……
「どうしてくれるんです、変に目立っちゃってジロジロ見られちゃってるじゃないですか!」
「そうか? 目立った理由は千夏が大声出したり、俺を突き飛ばしたからだと思うけど? じゃあ、ちょっとそこの店にでも入ろうか」
ハッキリ言われればそうなんだけど、もともとは櫂さんが妙なところで喋るからじゃない。だけどそう言い返す暇も与えないように、櫂さんは私の手を握ると近くのビルの中へ強引に連れて行ってしまった。
……本当に櫂さんは、何をするにも自信に満ち溢れていて羨ましくなっちゃう。