飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
「えっと、ここってもしかしてゲームセンターですか?」
「ああ、ゲーセンくらいは連れてきてもらえてたんだな。あのジジイの様子から正直なところ、千夏はどこにも出してもらえてないのかと思っていたんだが……」
ちょっとホッとしたような表情の櫂さんに、私は本当の事を話した方が良いのか迷う。
彼の言う通り私の父は最低限の外出以外は決して許そうとはしなかった。私をあの屋敷から連れ出してくれるのは、ずっと柚瑠木兄さんだけで……
このゲームセンターだって私の記憶とは全く違う、あの時に連れて行ってもらったゲームセンターはもっと子供っぽかったもの。
「……母が、まだ元気だった頃です。我儘を言って何度か連れて行ってもらったことがありました」
こんな広いゲームセンターじゃなくもっと小さな所だったけれど、母と二人で楽しく遊んだ覚えがある。あの時間は普段は笑わない母が笑顔を見せてくれて……
「千夏の、本当のお母さんのことだよな? あの狸ジジイの愛人だったって噂の」
櫂さんはよほど私の父が嫌いなのか、少しずつ父の呼び方を変えていく。それでも私は腹が立ったりすることは無かった、あの人に何の感情も持っていないから。
それにしても……
「やっぱり櫂さんはご存じだったんですね、私の実の母の事も」