飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
「千夏の事を調べると同時に、君の家族関係や家庭環境が複雑な事を知った。だけど俺は二階堂 千夏に結婚を申し込むために、さらに詳しく君の過去を依頼して探らせた」
「……そう、ですか」
櫂さんのしたことを責める事は出来ない、私は彼が今まで相手にしてきたような生まれに何の後ろめたさもないようなお嬢様とは違う。
私の母が周りからは父の愛人と呼ばれ、隠れるように暮らし私を育てていたのは事実なんだもの。
そんな私に櫂さんが契約結婚を申し込むのだって、本当はそんなに簡単な事ではなかったのかもしれない。なのに彼は、本当に申し訳なさそうな顔で私を見つめて……
「……悪い、気分悪いよな。千夏や亡くなった君のお母さんについても、本当はゆっくり千夏から聞きたかったんだけど」
「私からですか? ですがもう調査をお願いして、私や母の事も分かってるのではないですか?」
確かに櫂さんは二階堂の屋敷の庭まで何度も会いに来てくれたが、変わった男性だと思い私も短い時間しか会話をしなかった。聞こうと思ってもそんな話を出来る余裕はなかったのかもしれない。
その後に櫂さんに会った時にはもう、彼と父の間でこの結婚は決まっていたようなものだったし。
「俺が聞いたのは、あの親子や周りの人間の悪意に満ちた君達への悪口みたいなもんだ。俺は千夏やお母さんの本当の話が聞きたいよ」
「櫂さん、嬉しいです……そんな風に言ってもらえたのは、初めてなの」