飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
今まで私や母に関わったほとんどの人が、心無い周りの話を疑うことなく聞いていたから。そうしてまるで物語の悪役のように、私達の存在は否定されるばかりだったのに……
でも櫂さんは全然違う。きっと父や兄に私の悪口をたくさん聞かされたはずなのに、彼は私の言葉をきちんと聞いてくれようとしてる。
その事に勝手に頬が緩む、自然な笑顔で櫂さんにお礼を言うことが出来たの。
「ああ、俺には千夏のいろんな話を聞かせてくれ。普段は君が誰にも話さないようなことでも、いつかは俺に教えて欲しい」
櫂さんも優しい笑顔でそう返してくれる。正しい人との距離の取り方が分からない私が焦らないように、ゆっくりと近づいて来てくれているよう。
「もしかして知りたがりですか、櫂さんは?」
「千夏に限ってだけ、そうなのかもな。そんな夫は嫌か?」
そんなこと言いながらも、櫂さんは余裕の微笑みで私の手に触れる。私の答え何か分かってると言うように、彼から優しく繋がれる手のひら。
「もちろん、嫌じゃないですよ」
「そうだろうな、じゃあ話の続きは帰ってからにしよう。千夏も久しぶりのゲームセンターを楽しみたいだろ?」
「……はい!」
櫂さんにそう言われて私も、ゲーム機に向かう彼に早足でついて行った。