飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
「じゃあ、あの大きな太鼓! 私はあれをやってみたいです」
目立つ場所に何台も設置してあるのだから、きっと人気のゲームに違いない。そう言って私は空いている太鼓のゲーム機に近づこうとすると……
「お母さん、私これやりたい!」
私の横をすり抜けて、女の子と男の子が太鼓の前に立った。すぐにこの子達の母親と思われる女性が、私の横に来て申し訳なさそうに頭を下げた。
「すみません、こういうのは順番なのに。うちの子達もちゃんと並ばせますので」
「いいえ、せっかくなのでお子さんのやり方を見せてもらってていいですか? 私もはじめてやるゲーム機なんです」
そうすれば近くでやり方を学ぶことが出来るし、この姉弟もすぐにゲームが出来る。なかなかいい考えが思いついたんじゃないかしら。
「いいんですか、すみません。あまり上手くないので参考にはならないかもしれませんが」
私は「気にしないで」と伝え二人の後ろでゲームを眺めることにした。いつの間にか櫂さんが隣に立っていて、彼も真剣な表情で子供達が太鼓を叩く様子を見ていた。
……きっと次は私と櫂さんの真剣勝負になるに違いない。
「やっぱり優しいんだな、千夏は。そういう君の真っ直ぐな優しさに俺は惹かれたんだけど」
櫂さんは太鼓のゲーム機に百円玉を数枚入れながらそう言った。私は取り付けられるバチを両手で持って太鼓を面をトントンと叩いてみながら聞き返す。
「やっぱりって、私が櫂さんに優しくしたことありましたか?」