飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
「ああ。今は忘れていてもいい、俺と一緒にいるうちにきっと思い出させるから」
櫂さんは私と同じようにバチを手に取ると、太鼓の面を叩きゲームを開始する。私の為に簡単な説明を見せてくれて、たくさんの曲の中からプレイするものを選び出す。
「……自信満々ですね、櫂さんっていつもそう。あ、私その曲が良いです」
「これね、意外と流行りの曲知ってるんだ? 千夏は自信満々な夫と自信喪失してばかりの夫、どっちが良い? 君の好みに合わせるよ」
自信喪失した櫂さんなんてとてもじゃないけど想像出来ない、落ち込んだ様子がここまで似合わなさそうな人も珍しいかも。
それに私の好みに合わせると言われても、本気で困るんですけど。
「あの屋敷にいたときはテレビばかり見てましたし、スマホでもすぐに音楽が聴けますからね。ほら、もう曲が始まるのでここからは真剣勝負です!」
まだ何か言いたそうな櫂さんを無視して、画面と太鼓を真剣に見つめる。流れてくる太鼓の模様に合わせて必死でバチで太鼓の面やフチを叩いた。
ただゲーム画面の上と下で流れてくる音符の数が全く違っていたのが気になったけれど……
一曲終わると続けてもう一曲、今度は櫂さんに音楽を選んでもらってチャレンジする。二度目になり少し余裕が出てチラリと櫂さんの方を見ると、私とは全く手の動きが違う。
……ねえ、櫂さん? さっき私が貴方から聞いた話と全然違ってないですか?