飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
「嘘つきなんですね、櫂さんって。さっきは私に、久しぶりだから幻滅するかも? なんて言ってたくせに」
ゲームが終わり二人のスコアが出ると、その数字には大きな差があった。しかも櫂さんは二曲とも失敗なしのフルコンボ、初心者コースでギリギリノルマクリアーした私なんかとは比べ物にならない。
聞いていた話と全然違う事に腹を立て、可愛くないと分かっていても嫌味の一つも言わずにはいられなかった。
「出来ると言って失敗するより、失敗しても大丈夫なようにハードルを下げたかったんだよ。その方が緊張しないし、下手でも千夏に嫌われずに済む」
「そんな心配は全くいらなそうでしたけど? 勝手に対抗心を燃やしていた私は物凄いマヌケじゃないですか」
初心者のくせに櫂さんと勝負して勝つ気でいたのが恥ずかしい、実力の違いを見せつけられて拗ねたくもなるわ。
太鼓のゲーム機から離れ、櫂さんを置いて一人でスタスタと店内を歩く。するとすぐに彼も後ろから私の横へと並んで歩きだして……
「悪かったって、俺は君にカッコいいとこ見せてたいんだ。千夏の気を引きたいだけなんだ、それでも駄目か?」
そういう言い方って狡い気がする、私を喜ばせる言葉で上手く丸め込もうとしてない? でも私は……
「カッコよくない櫂さんだって私はきっと好きになれますよ? だからそればかりでなく色んな櫂さんを私には見せてください」
「……あのさ、千夏の方が何倍もズルイだろ。そんなこと言われたら、俺はどんな馬鹿な自分も君に見せてしまいたくなる」