飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
父である二階堂 萩はこの屋敷に私を連れてきたその日から、この部屋の扉に鍵をかけた。それは私がこの部屋から出てはいけないのだと理解するまで続いたのだった。
今は従兄の柚瑠木兄さんが私を外に出そうとしてくれているけど……
「千夏はそこから出たいとは思わないのか? そんな籠の鳥みたいな生活で、本当に満足してる?」
「何を言ってるの? 貴方はどうしてそんな事を知ってるのよ、もし不審者なら人を呼ぶわよ!」
気さくに話しかけて来る様子から本当に不審者とは思えなかったのだけど、この屋敷の中にどうやって入って来たのかは謎だった。しかも、ここは屋敷の中でもかなり奥の場所なのに。
もし誰かに見つかったら、どんな大事になるか。早く屋敷から出さなければ……
「俺を心配してくれるのか? 大丈夫だ、今頃千夏の家族は大事な話し合いの最中だろうからな」
「大事な話し合い……? 貴方いったい何を言って?」
この男性の言っている事は謎ばかりで、詳しく教えて欲しいけれどそれを伝えれば「来なければ話さない」としか言ってくれない。
「無理だって、私がここから出たらきっと貴方にも嫌な思いをさせてしまうもの」
「ああ、千夏らしいな。そういうお人好しな性格だから、父親とはいえあんなジジイの言う事までなんでも聞いてしまうんだろうけど」
なぜ私がどちらかと言えばお人好しな性格だと知っているのだろう? もしかしてこの男性とどこかで会ったことがあったりするの?