飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
いつもは寝つきが良いのに、凄く疲れているはずの今日に限ってちっとも眠れない。さっきまで私を襲っていた睡魔もどこかに飛んで行ってしまったようで……
早く眠らなきゃ櫂さんがお風呂からあがってきちゃう、ベッドで彼と二人きりなんてどんな態度を取ればいいか分からないじゃない!
焦れば焦るほど目は覚めてしまうし、一から羊を数えたって余計な妄想がそれを邪魔してくる。もうどうしていいのか分からないまま、ただベッドの上の芋虫になって櫂さんが早く来ない事を願うことしか出来なかった。
でも、そんな願いが神様に届くわけもなく……カチャリ、と寝室のドアの開く音がした。
「……ふ、ははっ! まさか芋虫って、本当に千夏は可愛いな」
ベッドで丸まる姿を思いきり笑われて、恥ずかしくてガーゼケットから出たくない。そもそも誰のせいでこうなっているのか、櫂さんもよく考えて欲しい。
「だって、櫂さんが!」
「ん、俺が何?」
本当は分かってるくせに、櫂さんの声が笑っている事に私だって気付いているのよ。それでもきっと私に言わせようとしてるんだわ、この人は。
櫂さんの意地悪だと分かっているのに、私から言うしかなくてケットの端をギュッと握りしめた。
「だ、だって櫂さんが、夜が楽しみ……みたいなことを昼間に言ったから!」