飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
そうやってすブツブツ言いながら拗ねてみせると、櫂さんは私のそんな様子も堪らないというような顔で微笑んで見せる。
何を言っても、どんな顔をしても櫂さんを喜ばせてしまうのはどうして? 私は普段通りにに櫂さんに接しているはずなのに。
二階堂の屋敷では同じような態度を取れば、みんな怒って私を責めていた。それなのに……
「そりゃあね、経験豊富ってのは今さら否定はしないけど。今の俺はね……」
「……否定、しないんですか」
櫂さんのその言葉を聞いて何となく胸の中がムカッとした。自分から言い出したことだが、素直に肯定されるとちょっと気分が良くない。
だって、それってつまり……櫂さんは今まで色んな女性と、ということになる。
「嘘は嫌いだろう、千夏は。俺はこの場を適当に誤魔化して、この先の千夏の信頼を失くすようなことはしたくないんだ」
「私の、信頼……」
櫂さんは真っ直ぐに私との未来を見ているように感じた。でも分からない、私達は契約結婚で未来なんてあるはずがない。そのはずなのに……
「俺は千夏と出会って、君のことしか見えてないよ。ずっと千夏を探し出して、君をあの家から奪って手に入れる事しか考えて無かったからな」
櫂さんは多分嘘はついていないと思う。あの日の夜本当に迷ってあんな場所に来たんじゃない、この人は私に会いに来てくれたんだ。
「そうやって私の機嫌を取ってるのは、誤魔化しじゃないんですか?」