飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~


 それでも素直に喜べなくて、こんな言葉を(かい)さんにぶつけてしまう。変だわ、私はこんな風に誰かに我儘な態度を取ったりしないようにしていたのに。

「誤魔化しでも君へのご機嫌取りでもないよ。俺が今言っているのは全部千夏(ちなつ)への本心だから。実際にやってみせただろ?」

「……そう、かもしれませんけど」

 確かにそう、櫂さんは今言った事を実行して私をあの家から出し自由にしてくれた。きっと櫂さんがそうしてくれていなければ、私は一生をあの屋敷の奥で過ごすことになったでしょうし。

「それに」

「……それに、なんですか?」

 一歩、また一歩と櫂さんが私のいるベッドに近づいてくる。余裕の笑みを浮かべているのに、その眼はどこか獲物を狙うハンターのようにも見えた。
 もし、捕まったら私は櫂さんに食べられちゃうの……?

「そうやってヤキモチを妬いてくれるなら、少しくらい期待してもいいんだよな?」

「や、ヤキモチなんてっ、私は妬いてなんか……!」

 そんなはずはないわ、私が櫂さんにヤキモチなんて。だって私は恋をしたことも誰かを好きになったことも一度だって無い。
 それなのに結婚したとはいえ、数回会った事しかないこの人にヤキモチ?

 慌てて違うのだと説明しようとすると、すぐ横まで来ていた櫂さんがベッドへと両手をついて私を見つめてくる。
 ズズッとお尻使って身体を後ろに下げ逃げようとすると、今度は櫂さんがベッドに乗りあがり私を追い詰める。

「……妬いただろ、さっき? 千夏は俺にヤキモチ妬いてるよ」

 真っ直ぐに見つめられて、声もまともに出ない。誰か、この櫂さんから逃げる方法を教えてくださいっ……!


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