飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
「い、痛いのは嫌いです。あと、怖いのも好きじゃありません。だから……っ」
もちろん櫂さんが本気で私を痛めつけたりするなんて思ってはいない、だけど私には今の状況をどう誤魔化せばいいのかも分からなくて。
私の知っているお仕置きは棒で叩かれたり、部屋から出してもらえない事だった。でもきっと櫂さんの言うお仕置きはそんな事じゃない。
……何か分からない方が逆に怖い気がするのよ!
だから必死になったの、櫂さんがお仕置き無しで許してくれるように。けれどこの状況を楽しんでいる彼の気が変わるわけがなくて……
「うん、痛い事も怖い事もしないって約束する。そんな事よりもっとたくさん千夏の胸をドキドキさせてやるから……」
「え? え、え……?」
ニッコリと微笑んで私をベッドの端に追い詰めた櫂さん。もうこれ以上逃げられないのに、櫂さんの顔が段々と近づいて吐息を感じるほどの距離になって……
「目を閉じて、千夏……」
ウットリしてしまうほど甘く色気のある声に、一瞬我を忘れてしまいそうになる。櫂さんに言われるままに瞳を閉じかけた私だけど、緊張のあまりに思わず————
『ゴツッン!』
鈍い音が寝室に響く。その瞬間、私の身体からドッと力が抜ける。
「……ってえ、マジか」
頭を押さえて呻る櫂さん。それもそのはず、私は何のガードもしていない櫂さんのおでこに思いきり頭突きを食らわせてしまったのだから。