飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
「それでいいんだよ、俺には千夏の色んな表情を見る権利があるんだから」
「権利? 権利って櫂さんはいったい何のことを……あっ」
彼の言っている言葉の意味が分からず問いかけようとして、心当たりに気付いた。つまりこの人はこう言いたいわけだわ。
「千夏の《《すべて》》を知っていいのは、夫である俺の権利だろ?」
「すべてって……」
何かを含んだような言い方をされて、またまた顔がかあっと熱くなる。どうして櫂さんはこんなに私を翻弄するのが上手なの?
揶揄われているのだと分かっていても、いちいち彼の喜ぶような反応をしてしまう。けれど私だって、大人しく好きにされているような性格でもない。
「そうやって私で遊ばないでください! 妻を玩具にするのも夫の権利だなんて言わせませんからね!」
櫂さんに掴まれていた手首を力づくで奪い返して、急いでベッドから逃げようとする。こうなったら寝る場所はリビングのソファーでも構わない。
そう思ってたのに、今度は後ろから伸びてきた腕が私の腰に巻き付ついてきた。
「きゃあっ! は、離してよ!」
「待て、千夏。さっきのは俺がやり過ぎた、謝るから逃げようとはしないでくれ」
彼の腕から急いで逃げようとすると、櫂さんは腕の力を緩めることなく私に謝ってきた。やり過ぎているという自覚はあるのに、どうして私を何度も揶揄おうとするのかしら?