飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
すぐに許してあげる気持ちにはなれず、少しくらい反省してもらおうと櫂さんからプイッと顔を背けてみせる。
こんなことで効果があるのかは分からないが、今の自分が櫂さん相手に出来るのはこれくらいしかなくて……
「ごめん、千夏。君の反応が可愛すぎて、俺もつい調子に乗ってしまったんだ」
だけど思ったよりも効果があったのか、櫂さんは私の両手首を持って焦った様子で謝ってくる。さっきまでの余裕はどこに行ったのかと思うくらいに。
返事をしないままでいると、櫂さんは困ったように頭を下げて私が答えるのを待っているようで。
……意外と可愛いのは、櫂さんの方かも?
しょぼんと俯いて私の機嫌が直るのを待つ姿は、まるで叱られたばかりの大型犬のよう。
猫よりも犬派の私としては、そんな櫂さんの頭頂部を撫でたくてたまらない気持ちにさせられてしまって。
まだ許したくないけれど、今すぐその触り心地の良さそうな髪に触れたい。ああ、こんな時まで櫂さんは狡いんだわ!
そんな矛盾した気持ちを抱えて、一人で呻っていると……
「千夏? 本当に許してくれないのか……?」
そんな悲しそうに言う必要ありますか? 櫂さんがわざと私が戸惑うような言葉や態度を選んでいる事は分かっているのに、まんまと騙され思いきり動揺してしまう。
どうしよう、可愛いわ。今すぐギュウってしてあげたい……!