飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
ひどく焦ったような櫂さんの声、けれどそれも全部無視してギュウッと腕に力を込めて。仕方がないの、こんな可愛いことをする櫂さんが悪いんだから!
同じ理由で私を揶揄う櫂さんには腹を立てるのに、今の自分はそれよりも大胆な事をしてしまっている。
「千夏っ、ちょっと待て! なんで急に、こんな事をっ……?」
櫂さんはジタバタと両手を動かして、彼に引っ付いた私を引き剥がそうとする。だけどまだまだ、私が満足出来てない!
「駄目です! 今は私の番、櫂さんが可愛いからいけないんですよ」
「なんでそうなるんだよ!? いいから千夏は少し俺から離れて!」
必死な声でそう言われ、私は渋々櫂さんの頭部を抱きしめていた腕の力を弱める。彼の髪も触り心地が良くて、抱きしめると胸にすっぽり収まってよかったのに。
そうガッカリしていると大きなため息を吐いて櫂さんが顔を上げる。でもその表情はいつもと違っていて……
「どうしてそんな真っ赤な顔をしてるんですか、櫂さん?」
「それに気付いていないところが、やっぱり千夏なんだよな……」
凄く呆れたような言い方に、ちょっとだけカチンとくる。よほど可愛いと言われたことや、頭を抱きしめられたことが恥ずかしかったのかと考えていると……