飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~


(かい)さんは私のことを卑しい女だと思わないの? あの人たちみたいに私を軽蔑したりしない……?」

 もちろん自分がそんな卑しい事をしていると思っていたわけじゃない。
 母と二人きりの時も、二階堂(にかいどう)の屋敷で暮らすようになっても自分は清く正しく生きてきたつもりだった。
 それでも心無い言葉を何度も浴びせられれば、自然と自分に自信がなくなってしまっていってしまう。そんな私に櫂さんは……

「思ったりするわけないだろ、そんな事! 千夏(ちなつ)がどれだけ純真で綺麗な心を持っているのか、俺は誰よりも分かっている。こんな千夏が卑しいと言うあの家の人間の方がよっぽど下劣だよ!」

「櫂さん……」

 今まではあの家の人間がみな正しくて、私が間違って存在だった。たとえそれにどんな理由があったとしても、悪者になるのは必ず私。みんなそれに合わせて生きていた、それが私の世界だったはずなのに……
 櫂さんは私を正しいと言ってくれた、こんな私を卑しいとも思わないでくれた。彼の言葉で私の世界がすべて変わっていくような気すらしたの。

「純真で綺麗、櫂さんは私のことをそんな風に見てくれてるの?」

 彼のセリフがとても嬉しかった、私を認めてくれるその言葉をもっと聞かせて欲しかった。狡いとは思ったけれど、もう一度とせがんでみせる。
 すると今度は櫂さんに腕をひかれ、そのまま強く抱きしめられて……


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