飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~


 (かい)さんは恥ずかしくないのだろうか? 妻とは言え私みたいな女に、こうも甘い言葉ばかりを並べ立てて。
 こちらからは「好き」の一言もなかなか言葉にすることが出来ないのに。

「嫌だね、俺は千夏(ちなつ)を手に入れたらメチャクチャ甘やかしてやろうって決めてたんだ。これからは俺のことしか考えられなるくらい、君を俺だけのものにするんだ」

「そ、そんなの困ります……」

 今だって十分櫂さんのことばかりを考えてる、昨日からずっとそうなっているのに。むしろ櫂さんの事を考えなくていい時間が欲しいくらいだわ。
 そんな私の気持ちに気付いているはずの櫂さんだけど、手加減する気はないらしく……

「困ればいい、千夏の困った顔も俺は見てみたい。それに心配しなくても、もう君は俺の妻になっている」

「ううう……それは、そうですけど」

 だからと言って必要以上に甘やかす意味は何ですか? 親兄弟にもまともに頼れなかった私に、櫂さんの優しさは劇薬のようで堪らない。
 もし……私が中毒になったら、責任取ってくれるんですか? ねえ、櫂さん。

 こんなに夫婦として仲睦まじくすることが出来ているのに、私には一つだけ引っかかっている事がある。

 ――決して悪いようにはしないと約束します。千夏さん、契約結婚……俺としてくれますよね?

 あの時の櫂さんの言葉、私は忘れてはいない。その内容についていまだ何も話してくれない櫂さんに少しだけ不安を感じてる。
 優しくされるのは嬉しい、だからこそハッキリさせなきゃいけないと思うようになった。
 私達を結んでいる、その契約について。


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