飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
知らないままで、何も気付かないままでいれば、今の幸せな毎日が続けられるのは分かってる。
櫂さんが自ら話そうとしないという事は、この契約は二人にとってあまり良くない内容なのかもしれないという事も。
それでも、いつか私は……
「どうした、千夏? そんな暗い顔をして」
「あ! いえ、ごめんなさい。ちょっと考え事をしてて。ああ、これも美味しいですね!」
今すぐに聞く勇気はなく、その場を誤魔化すように笑ってみせる。櫂さんは少しだけそんな私を気にしていたが、そのまま二人で仲良く食事を終えた。
「やっぱりいいよな、千夏のエプロン姿は。こうして後ろからジッと眺めているのも悪くない」
洗い物だけは自分にさせて欲しいと櫂さんに頼み、エプロンをつけて始めたはいいのだけど……どうも後ろにいる櫂さんの視線が気になって仕方ない。
「そういう事を口に出すのは止めてください、エプロンが見たいなら後で渡しますから」
「分かってないよな、千夏は。千夏が着けてこそこのエプロンの意味があるんだ、それに渡してもらうのなら千夏の方が良い」
私の言いたいことは分かっているはずなのに、櫂さんはいつもこうして私を困らせようとしてくる。冗談なのか本気なのか分からない言葉で。
言われるまま私を櫂さんに渡したら、いったいどうなってしまうのかもちょっと不安だ。