飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~


「その、私は……もう、(かい)さんだけのものですから」

 契約結婚とはいえ、私はもう櫂さんに嫁いだ身なのだから彼のものになっている。今さら渡せと言われても、もう渡せるものなんて残っていない。
 そう思って櫂さんを見つめると、彼は凄く困った顔をして……

「……俺、ちょっと一服しに外に出てくる」

「ええっ?」

 さっきまで私のエプロン姿がいいとか言っていたくせに、いきなり外に出るってどういう事? 私のエプロン話には興味がなくなったのか、櫂さんはそのままキッチンを出て玄関の方へと行ってしまった。

「……櫂さん、タバコなんて吸わないのに」

 隠れて吸っているとかでもない、彼からは一切煙草の匂いいなんてしないから。父がタバコをたまに吸う事があったから、私でもそれくらいは分かる。
 もしかしてまた私が櫂さんを困らせる様な事を言ってしまったのだろうか? もしかして私が櫂さんのものだと、困る理由があったりするとか……?

 あれほど特別だと、想いを伝えてくれるのだから喜んでくれるかと思ったのに。やっぱり結婚していても恋愛というのは難しい。
 
 結局櫂さんがリビングに戻ってきたのは、私がすべての洗い物を終えて棚への片付けも綺麗に終えてしまってからだった。
 その後で櫂さんに出て行った理由を問い詰めたけれど、何度聞いても「千夏(ちなつ)の所為だろ」とまともに答えてはくれなかった。


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