飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
すると下から見えてきたのはさっきまでの焦っていた櫂さんではなくて。
「……千夏、そろそろ俺も我慢の限界なんだけど?」
そう言って満面の笑顔で私の頬を撫でてくる櫂さんだったが、なぜだか同じように笑えない。
眩しいほどのその笑顔の下に見てはいけない何かが隠れてる気がして、そっと櫂さんの太腿から降りようとしたのだけど……
「ダメだ、今度は逃がしてやらない」
スルリと腰に腕を回されてしまい、驚いてちょっとだけ手に力を入れてもビクともしない。どちらかと言えば細身に見える櫂さんだが、こういう時の力はびっくりするほど強い。
「え? あの、櫂さん……?」
「あんな事されて、俺が大人しく我慢出来ると思ってるのか? 千夏もそろそろ俺の妻になったという事が、どういうことなのかを理解した方がいい」
そう言って腰に回した腕に力を込めて、どんどん私を櫂さんに近づけていく。このままじゃ抱き合うような格好になると、焦って彼の胸を叩いても止めてくれなくて。
あっという間に私は櫂さんに寄りかかるような体勢で抱きしめられてしまう。
「櫂さん、私恥ずかしいです……」
櫂さんの太腿にお尻を乗せた状態で、身体は彼の上半身に寄りかかっている。まるで父親に抱っこされている子供みたいだと顔が熱くなった。