【完】素直になれない君と二度目の溺愛ウェディング
ほっくんって嬉しそうに笑う時本当に優しい顔になるなあ。 ちょうど冷やし中華を食べ終わり箸を置くと「レナをよろしくね」と俺へと小さく頭を下げる。
やっぱりほっくんって性格が物凄く良い。 彼の笑顔と共に岸田ちゃんの般若のような怒り顔を思い出した。 少しだけ憂鬱な気分だ。 けれど彼女に頼まれたから、約束を取り付けないわけにもいかない。
「そういえば…営業課の岸田ちゃんがほっくんと飲みに行きたいって言ってたんだけど」
岸田ちゃんの名前を口に出すと、ほっくんの柔らかい笑顔が少し歪んだ気がした。
分かる。すごぉーく、気持ちは分かる。 こうやって何回かほっくんと岸田ちゃんの仲を取り次ぐ為に、さり気なく合コンめいた飲み会を開いた。
その度にほっくんがとても疲れていて、うんざりしていたのも知っている。 個人的な連絡先は交換しているはずなのに、彼女が俺へとほっくんの仲を取り持つ事を頼むのも、全く相手にされていないからだろう。
「俺、少し岸田さんは苦手かな……。彼女結構頻繁に連絡してくるんだけど困っていて…」
普通の男性ならば岸田ちゃん程の女性に言い寄られれば悪い気はしないだろう。
けれどほっくんの普通の基準は俺達とは違う。 本当に迷惑そうな顔をして少しだけ顔をしかめた。
「だよなあ。 うん、分かった俺からもやんわりと断っておくよ」
「海…悪いな。お前にまで気を遣わせちゃって。」