【完】素直になれない君と二度目の溺愛ウェディング
「そうよ、竜馬さん。ルナは翔さんという人を見つけてあっという間にお嫁に行ってしまったけれど、レナだってまだ26歳よ。 そんなの突然言われたって考えられないわよね?
それに竜馬さんだってまだまだ51歳じゃない。会社の跡取りの話をするのは早すぎるわ」
「しかし、真子さん。」
「はいはい、このお話は終わり~。 それよりレナ、今日はうちで夕ご飯を食べて行きなさい。
今日はレナの大好きなちらし寿司を作ろうと思っているのよ」
「あ…でもお母さん、今日は」
その時ちょうど、ポケットの中に入れて置いた携帯が鳴った。
連絡は海からだった。
早く海に会いたかった。 私の家の事情なんて話す気にはなれないけれど、それでも海に会いたかった。
『レナちゃん、ごめーん!! 今日遅くなりそう。先方とご飯行く事になっちゃって!
埋め合わせします!多分22時までには帰れるから、それからレナちゃんの家に行ってもいい?』
なんつータイミングだ。 今日は早く実家から帰りたかったけれど、断る口実さえなくしてしまった。
用事があるとか適当に言い訳を作ればいいのに、母が私の好物を用意してくれていたら、はっきりと断れない。
今は両親と楽しく食事する気分じゃなかったのに。 早いく会いたい。 海のあの優しい笑顔を見て安心したい。
結婚。お見合い。跡取り。 そういう面倒くさい問題に、今は向き合いたくない。
ふんわりと柔らかい陽だまりのようなあなたの腕の中で、猫のようにゴロゴロと喉を鳴らして眠りたかった。