【完】素直になれない君と二度目の溺愛ウェディング
いつも通りの他愛のない会話。 料理とお酒を注文して、最近の互いの仕事や生活について。
北斗は私を呼び出しておいて、海の話は自分からしようとはしなかった。 けれど私は海の事ばかり考えている。
毎日会社で海と会っているはずだ。 最近の海はどう?元気にしているの? 顔を見合わせて話をしていないから知らない。だから知りたい。
自分からシカトをしているくせに、我儘な話だとは思う。 北斗と話しているのに海の事ばかり考えていた。
いつの間にか彼は私の心をこんなにも独占していたのだ。
ひとしきり話し終えた後、小さな沈黙が出来る。
生ビールを飲み干した北斗は店員を呼んで、珍しく日本酒を注文した。
「北斗が日本酒なんて珍しいね」
「ん、レナも熱燗飲む?」
「寒くなってきたし、いいわね」
二人で熱燗で再び乾杯をしてまったりとした空気が流れる。 なんか懐かしい、ずっと遠く昔のようだ。
いつも二人だった飲み会に海が入って来るようになって随分賑やかになった。 最初は鬱陶しいと思ったのに、今はここにいない事にさえ違和感を覚える。
私の生活の中に、海はいつしか自然と入り込んでいた。 あっという間に風のように私の心をさらっていった。