【完】素直になれない君と二度目の溺愛ウェディング
◇7◇ *SIDEレナ* あなたしかいない。

◇7◇ *SIDEレナ* あなたしかいない。


その日の桜栄家は不穏な空気に包まれていた。
海と結ばれてからの週末、私は実家に顔を出すと父に報告した。

父は夏のお菓子フェアが終わりやっと落ち着き、やっと母と来週紅葉を観に旅行に行けるのだと上機嫌で

その話の後にこの間されたお見合い話を切り出された。 ここまでは予想通り。想定内である。

しかし……

「お父さん、私お見合いはしたくないわ」あの日言えなかった事をハッキリと告げると、父の動揺は電話越しでも明らかだった。

「まだ会ってもいないのに……」 確かにそれは父の言う通り。けれど会わなくたって分かる。今の私に海以上の存在はいない事。そして、この先の私の全てを理解してくれる人には出会えないだろう。

明らかに落胆した声で「何故なんだ…」と父は問うた。

26年間めっきりと男の陰が見当たらない娘を、父は一体どういう目で見ていたのだろうか。 次の瞬間とんでもない事を口にしたのだ。

「まさか…レナ…。男性には興味がないのか…?」

「はぁ?」

「いや、お父さんはそれについてあーだこーだ言うつもりはない…。
性同一性障害という言葉も認知されてきた昨今だ。
でもそうであるのならば一番に相談して欲しかった…」

「ちょっと…お父さん……」

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