【完】素直になれない君と二度目の溺愛ウェディング
「あ、阿久津フーズファクトリー?!
何で阿久津さんの会社の社員とお前が! う、ハァハァ……」
北斗の会社なら安心でしょう?そう思って口にしたが、父の息が一気に荒くなる。
このまま電話で口論を続けていたら、父の血圧が上がって倒れてしまうかもしれない。
電話を代わったのは母だった。
「もしもし、レナ?」
「あ、お母さん……」
「竜馬さんが落ち着いて話せないみたいだから代わったわ。
あらかたの話は聞いていたから予想は出来ているけれど、付き合っている彼がいるのならば一度お家に連れてきて頂戴。
そうすればね?お父さんも納得するかもしれないし、ね?」
父とは違いおっとりとした喋り方をする母は、いつもと変わらず優しい口調で言った。
桜栄家はどこまでいっても母が一番のしっかりものなのだ。
「私はレナの選んだ人なら心配はないの。 あなたは昔からしっかりしている子だから。
でもそんな所がお母さんは少しだけ心配でもあったんだけどね。レナの事だから会社の事や私達の事を考えて好きな人が出来ても我慢しちゃうんじゃないかって。
だからあなたにそんな人が出来てとても嬉しく思っているのよ。 でもお父さんの言いたい事も分かる。
だからこれからの事をきちんと互いを交えて話し合いましょう」