【完】素直になれない君と二度目の溺愛ウェディング

「ヒナー、パパの方へおいでー」

白鳥翔が両腕を広げるも、ぷいっと顔を背ける。

「ヒナちゃーん、こんなパパは嫌でちゅね~? じいじの所へおいでー」

しかし父が呼んでも見向きもせずに海の胸にぎゅっとしがみついた。 その様子を見て、二人は苛々しながら海を睨みつける。

それでもお喋りがまだ上手に出来ないヒナは笑顔のままで、ぶーぶーとかまーと言葉にならない言葉で海へと何かを伝えている様だ。

思わずほっこりとした気持ちになる。 ふんわりとしていてほがらかな木漏れ日のような人。そんな彼だから老若男女問わず愛され好かれる。私もそのうちの一人だった。

海の側に居ると安心する。 だから一緒に居たい。理由なんて充分だ。それを私は父に素直に伝えればいいのだ。

母が今日の為に用意してくれたご馳走を囲み、和やかな家族団らんになるはずだったのに…緊張感に包まれた。

呑気に寛いでいるのは白鳥翔とヒナ位で、母もルナもハラハラとした表情で父のご機嫌を窺う。 どう見てもピリついた空気なのだが海はリラックスしたように父や母に話を掛ける。

…やっぱりこいつ大物だわ。父はわざと厳格な雰囲気を出しているのだ。それにも関わらず一切怖気づいた様子も見せずに、笑顔を崩さない。 その様子を見て白鳥翔はちょっぴり面白くなさそうな顔をした。
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