【完】素直になれない君と二度目の溺愛ウェディング
父のごほんと大きな咳払いがリビングに響き、一瞬話がぴたりと止まる。 海の瞳にジッと見入り真剣な表情を浮かべた。張り詰めた空気にこちらの胃がキリキリと痛む。
「相馬くんの事はよぉーく分かった。 …というか、君の話ならば阿久津社長から聞いている…」
「ちょ!お父さん…!おじ様に何を言ったのよ?!」
「レナは黙っていなさい」
「黙っていられないわよ。陰でこそこそと何を話したというの?!」
計られた…!即座にそう思う。
私の厳しい口調に父は一瞬怖気づいたが、もう一度ごほんと大きな咳ばらいをした。
私達の知らない所でおじ様に海の身辺を探るような行為は私が許さない。 そう言おうとしたけれど、それは海の強い視線により制止される。
眉をひそめる父を前にして、海は穏やかな笑みを絶やしはしなかった。
「阿久津社長とは長い付き合いだ。それこそレナやルナが産まれる前からの付き合いなんだ」
「そうなんですね。 阿久津社長にはとてもお世話になっています。 社長なのに気取った所が少しもなくて、社長室で働くようになってからもとても頼りにしています。」
「うむ…。 阿久津社長からも君が優秀な社員だとは聞いている。
とても仕事が出来て、将来を期待しているそうだ。」
「それは光栄です。僕も阿久津社長から桜栄社長の事は伺っております。」