【完】素直になれない君と二度目の溺愛ウェディング
ぷいっと顔を背けた桜栄社長は子供のようで、ふっと小さく笑みが零れる。
仲が悪そうな雰囲気に見えたが、実際は喧嘩する程なんとやらという奴だろう。 義理の父親である彼にハッキリと物事を言える程白鳥さんも心を許しているに違いない。
俺は……桜栄社長とそういう関係になれそうにない。 褒め上手でおだてるのも上手いが、いつも胡散臭いと言われる。 レナは俺の性格は得ばかりすると言ってたけれど、ある意味こういう時は損だ。
真っ直ぐで嘘のない白鳥さんの方が、桜栄社長の信頼は得やすいのだと思う。
「白鳥くんはああ見えて仕事は出来る男だ。 それに…悔しいがルナやヒナへの愛情だって…
まあ、結婚するまではひと悶着あり、あいつの父親の会社はぶっ潰してやろうとも思ったがな…」
「ふっ」
思わず笑みが零れると、桜栄社長の頬の緊張が僅かながら和らぐ。
優しい父親なのだ。 娘の幸せを一番に考えるような。
器用そうに振舞って実は不器用そうな所は、少しだけレナに重なる。 レナに重なるからこそ、俺はこの人を嫌いになれない予感がした。
「本気だったのだぞ…?」
「ええ、桜栄社長のような真面目な方が言うと冗談には聞こえません。
それにめげずに反抗した白鳥さんの姿を想像すると少し笑えました。」