【完】素直になれない君と二度目の溺愛ウェディング
「いえいえ~肩が凝っているのかな~と思って。
あ、ガチガチですよッ。 日々の疲れが溜まっていますね~」
無理やり肩を揉むとすっかりと大人しくなって、また小さくため息をついた。
「もっと右側だ。 うむ。強さはちょうど良い」
不機嫌そうな声でそう言ったけれど、どうやら肩揉みはして欲しいらしい。
「君は、肩を揉むのが上手だな」
「あはは、子供の頃とーちゃんの肩をよく揉んでたんですよ。
農作業してるから肩も凝るらしくって」
「成る程な。確か……ご両親は東北で農家をやっているといっていたな。 大変な仕事だ」
「いえいえ、桜栄社長のようなご立派な仕事に比べたら全然ですよ。 社長の方が大変でしょう。 ん~、凝ってますねぇ」
「何を言っている。 農家は立派なお仕事だ。 私達が生きているのに必要な食物を作っている。
ご両親の仕事をそんな風に言うもんじゃないよ」
広くて大きな背中はじんわりと温かかった。 フッと小さく笑みが零れたら、桜栄社長はくるりと顔だけこちらへ向け不思議な顔をした。