【完】素直になれない君と二度目の溺愛ウェディング
「いや、やっぱり親子だなあと思って。
いつかレナちゃんもそんな事を言っていたなあって。そう言われて、すっごく嬉しかったって事を思い出して」
そう言うと桜栄社長は照れくさそうに顔を前へ向けた。 コホンと小さな咳ばらいを一つした後「君の手は気持ち良い」と小さな声で言った。
それだけで嬉しい気持ちでいっぱいになる。
狭い露天風呂で大の大人が体を寄せ合っている姿は、はたから見れば滑稽だとも思うがちょうど人気はない。
桜栄社長の大きな背中に故郷の父を思い出せば、優しい気持ちにもなる。 近々レナを連れて実家に帰ろう。そんな事を思いながら桜栄社長の肩を揉む。
「………北斗君がこの間私を訪ねて来た。」
「ほっくんが?」
「ああ、仕事で近くに来たから挨拶をと。 そこで君の話をされた。
全く北斗君も阿久津社長も同じ事を言う。 相馬海という男はとてもいい子だと…。
特に北斗君は君とレナが出会うきっかけになったという」
「ああ、そうですね。 ほっくんと飲みに行った時にレナちゃんも来ていて…最初はすごく綺麗な子だなーって思って。
一目惚れですねッ」
ちょっぴりふざけ気味に言ったら、桜栄社長はこちらを振り返りじろりと睨んだ。