【完】素直になれない君と二度目の溺愛ウェディング

チャペルで誓いの言葉を言って、誓いのキスをした後
皆が待つ階段の扉を前にしていると、海が小声で言った。

バージンロードを歩く時父は緊張した面持ちで、カチカチだった。 リハーサルの時も手と足が同時に出てしまうと言って、中々息が合わなかった。

でもちらりと父の顔を覗きこむと、私とよく似ている猫の様な瞳にはうっすらと涙の幕が張っていた。

それを見たのと同時に私の涙腺も決壊してしまったのだ。

’お父さん、ありがとう’隣で小さく呟いた言葉が父へ届いていたかは定かではない。
けれども皆で笑顔で今日という日を迎えられた事には感謝している。

私は今、世界で一番幸せな花嫁だと胸を張って言える。
まるで私の心の声を先回りしたように、海が呟いた。

「今日は俺、世界で一番幸せな気分だよ」

その言葉にフフッと小さく微笑むと、誰にも見えない所で海が私の頬に唇を落とした。
顔を上げて海へと笑いかけると、犬のような人懐っこい顔をした海が真っ黒の瞳を優しく揺らした。

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