【完】素直になれない君と二度目の溺愛ウェディング
互いに買い物を済ませてスーパーを出ようとすると、外は小雨が降っていた。
こちらの顔色を窺ったレナは戸惑っている俺に、得意げな顔をしてベージュの折りたたみ傘を開く。
一瞥した後、直ぐに歩き出してしまった。 そりゃあないよ。どーせ君の帰り道は俺のマンションの通り道だ。傘に入れてくれてもいいだろう。 まあ、こんな小雨気にも留めていないのだが。
意気揚々と歩き出したかと思えば、ぴたりと足を止める。
肩越しで傘を持ったまま鞄の中を漁りだすレナの姿が少し遠くで見えた。 どうやら焦っているようだ。
小走りで駆け寄ると、猫の様な目をつり上げた。
「どうしたの?」
「いや……ちょっとマンションの鍵が……」
ガサゴソと鞄の中を漁るレナに焦りの表情が滲む。
「ない!ない!マジでなーい!」
どうやらマンションの鍵をガチで失くしたらしい。 傘を持ってやると両手で鞄に手を突っ込むが、その中から鍵は見つからなかった。
気が付けば空はどんどん暗くなっていって、雨脚が強くなってくる。
焦った顔可愛いなあ。そんな呑気な事を考えながら、顔を真っ青にさせるレナを見つめていた。 アスファルトの上に置き去りにされたスーパーの袋に細かい雨粒が降り注ぐ。