【完】素直になれない君と二度目の溺愛ウェディング
「ひ、ひどー…何もしてないのにさ」
「裸でウロウロしている方が悪いのよ。いくら夏だといっても冷房に当たっていたら風邪をひいてしまうわ」
「はいはいーおかーさんみたいな事言うなあー」
笑いながらティシャツを着る仕草は、どことなくセクシーに映った。 男の人の裸なんてお父さんのお風呂上がりしか見たことはない。 そして桜栄家の父親は年相応にお腹がタプタプしている。
だから自分と同世代の男性の裸を見るのさえ生まれて初めてなのだ。 自称恋愛の達人が聞いて呆れる。
分かりやすく動揺した私を見て、海はニヤニヤと意地悪な笑顔を浮かべている。 とんだ曲者だと思う。
真ん丸の大きな黒目がちの瞳は、ルナが飼っている愛犬によく似ていた。
見た目も性格もどちらかと言えば犬系なのだ。 人懐っこく誰にでも尻尾をふって、ただただ愛情を求め続ける。 私とはやはり正反対の人種だ。
「とりあえずソファーに座りなよ。 レナちゃんがお風呂に入っている間に鍵業者には連絡を入れておいたよ」
「そうなの……?」
「結構怪しそうな所もあったからね。 どっちにしても危ないからマンションまで一緒に行くよ。
でも二時間くらい時間が掛かるみたいだから、その間はうちでゆっくりとしていればいいよ」
「そう…何かありがとう…」