【完】素直になれない君と二度目の溺愛ウェディング
「レナちゃんはすごぉくいいこいいこだからね~」
むず痒い気持ちでいっぱいになる。 何を喜んでしまっている。これじゃあ私の方が頭を撫でられて喜んでいる犬と変わらない。
犬はあんたの方なのに……。 こういう時どういう態度を取っていいか分からず、硬直したまま絶句してしまった。
次に海の触れている頭の部分から熱が産まれて、顔が熱くなる。 逃げるように立ち上がりテーブルの上の空になった食器を手に取る。
慌ててキッチンに向かうと同時に海の携帯の電話が鳴る。
「あーはい!ありがとうございます!今向かいますので、はいはい。」
どうやら先程連絡を取ってくれた鍵業者のようだ。
「今着いたらしい。 一緒にマンションまで行こう」
「でもまだ後片付けが……」
「そんなのいいよ。俺やっとく。早く行こう」
「う、うん。」
先程ひっくり返した鞄の中に携帯や財布を詰め直していく。 鞄の内側に手の甲が当たった瞬間小さな違和感を感じた。
「あああーーーーーッッ」 既に玄関に立っていた海は目をぱちくりとさせてこちらを見る。
自分でも馬鹿みたいで恥ずかしい。 鞄をひっくり返したのに、何故内側のポケットまでちゃんとチェックしなかったのか、と。外側のポケットはきちんと確認したのに。
その場で座り込みバツの悪い表情を見せる私の元へと海はやって来て、一瞬で状況を把握した。
内側のポケットからは、マンションの鍵。 握られたそれを見て海が呆れ果てた顔をした気がしなくともない。